カナダに来る前、私は北米と言えば日本車だらけの光景を想像していました。しかし実際にカナダで生活を始めてみると、そのイメージが偏っていたことに気付かされました。販売台数をみると、アメリカ車が上位を占めていたのです。
2023年の自動車販売台数データを基に、カナダ、日本、アメリカの市場動向を比較してみると、それぞれの国で車の人気が大きく異なっていることが分かります。
今回は、日本から持っていた先入観と、カナダでの実際の体験を通じて感じた車文化の違いについて語りたいと思います。
目次
2023年自動車販売台数
日本2023年乗用車モデル別販売台数トップ10
日本のデータ: 日本自動車販売協会連合会
乗用車ブランド通称名別順位(2023年)(軽自動車および海外ブランド車を除く)
- トヨタ ヤリス – 194,364 台
- トヨタ カローラ – 154,870 台
- トヨタ シエンタ – 132,332 台
- 日産 ノート – 102,508 台
- トヨタ ルーミー – 100,800 台
- トヨタ プリウス – 99,149 台
- トヨタ ノア – 95,181 台
- トヨタ ヴォクシー – 89,080 台
- トヨタ アクア: 80,268 台
- ホンダ フリード: 77,562 台
トヨタブランドが多くを占めます。
小型車やコンパクトカーが多く、都市部での取り回しや燃費性能を重視した車種が人気ですね。
カナダ2023年モデル別販売台数トップ10
カナダのデータ: CarGurus
- Ford F-Series – 123,267 台:ピックアップトラックの王者
- Ram Pickup – 75,257 台:ピックアップ
- Toyota RAV4 – 74,688 台:SUV
- GMC Sierra – 59,696 台:ピックアップ
- Chevrolet Silverado – 53,266 台:ピックアップ
- Honda CR-V – 52,146 台:SUV
- Toyota Corolla – 28,260 台:セダン
- Honda Civic – 27,803 台:セダン
- Nissan Rogue: 26,665 台:SUV
- Hyundai Tucson: 26,109 台:SUV
Ford、Ram、GMC、Chevroletとアメリカ車が並んでいます。Toyota CorollaやHonda Civicも根強い人気がありますね。
Civicがカナダで人気を集めている理由の一つに、カナダがホンダの世界有数の生産拠点であることが挙げられます。実際にCivicはカナダ国内でも生産されており、地元での信頼感や親近感が人気を支えているのかもしれません。詳しくはこちらをご覧ください。
アメリカ2023年モデル別販売台数トップ10
アメリカのデータ: Car and Driver
アメリカではカナダ以上にピックアップトラックが圧倒的な人気を誇ります。
- Ford F-Series – 750,789 台:ピックアップトラックの王者
- Chevrolet Silverado – 543,319 台:ピックアップ
- Ram Pickup – 444,926 台:ピックアップ
- Toyota RAV4 – 434,943 台:SUV
- Tesla Model Y – 385,900 台:電気自動車SUV
- Honda CR-V – 361,457 台:SUV
- GMC Sierra – 295,737 台:ピックアップ
- Toyota Camry – 290,649 台:セダン
- Nissan Rogue – 271,458 台:SUV
- Jeep Grand Cherokee – 244,595 台:SUV
カナダ同様、Ford、Ram、GMC、Chevrolet、Jeepとアメリカ車がずらりと並んでいます。また、Tesla Model Y (385,900台)の電気自動車(EV)がランキングに加わっており、環境意識の高まりやEV市場の成長が見て取れます。
ピックアップトラックが圧倒的な人気
両国ともに、販売台数トップはFord F-Seriesで、他のピックアップトラック(Ram Pickup、Chevrolet Silverado、GMC Sierra)も上位にランクインしています。
ピックアップトラックは北米市場での重要なセグメントであることが分かります。
走行中、頻繁にFord F-150を見かけます。車体の後方に大きくF-150と書かれてあるので分かりやすいです。
Ram Trucks(ラム・トラックス)は、ピックアップトラックや商用車を専門とするアメリカの自動車ブランドです。以下に簡単にまとめます:
- 設立年: 2009年
- 親会社: Stellantis(以前はFiat Chrysler Automobilesの一部)
RamはもともとDodge(ドッジ)のピックアップトラックラインとして存在していましたが、2009年に独立ブランドとして分離されました。
Chevrolet(シボレー)は、アメリカの大手自動車ブランドで、以下のようにまとめられます:
- 設立年: 1911年
- 創業者: ルイ・シボレー(Louis Chevrolet)とウィリアム・C・デュラント(William C. Durant)
- 親会社: General Motors (GM)
- 本社: アメリカ・ミシガン州デトロイト
Chevroletは、手頃な価格から高性能車まで幅広いラインアップを揃えたブランドで、100年以上の歴史を持つグローバルブランドです。
なぜピックアップトラックやSUVが人気なのか
ピックアップトラックとSUVは、安全性、実用性、多用途性を兼ね備え、特に北米の気候や生活スタイルに適した車種です。悪路や悪天候への適応力、高い居住性が支持される一方、デザインやステータスといった感情的価値も人気を支える要因だと思います。
安全性と安定性への信頼
悪天候への適応力:
雪や雨、横風の強い環境でも、4WDやAWDの採用によって高い安定性を発揮し、セダンのように風に流されにくいという実用的な利点があります。
重量による安全性:
ピックアップトラックとSUVはセダンや小型車に比べて重いため、衝突時の耐久性が高く、特に北米の広い道路や高速道路での安心感が得られます。
私も経験しましたが、セダン以下のサイズの車は、高速道路で風や雪に影響を受けやすく、特に雪道では横風に押されてハンドルが取られることがあります。
多用途性と実用性
広い荷物スペース:
ピックアップは荷台を活用した荷物運搬、SUVは車内の広い空間で家族やアウトドア用品を余裕を持って運べる点が魅力です。
オールラウンドな性能:
日常使いからレジャー用途まで幅広く対応できます。アウトドアアクティビティ(キャンプ、スキー、ボート牽引など)が人気であり、それに対応できる車両が求められます。
オールラウンドと言えばSubaruですが、アメリカ販売台数20位(Outback)、21位(Crosstrek)、24位(Forester)につけています。
ブランド戦略とトレンド
デザインと快適性:
近年のピックアップやSUVは、高級感や快適性が向上しており、単なる実用車から家族向けやファッション性を持つ車両へと進化しています。
ステータスシンボル:
大型車は「余裕のある生活」や「力強さ」を象徴するイメージがあり、これが購入動機になることもあります。
ピックアップトラックは、男性のステータスシンボルとしてのイメージが強く、日本以上に「男性らしさ(masculinity)」が求められる文化的背景が影響していると感じます。
中国、ベトナムメーカーの台等
中国メーカーの北米進出について
2024年12月時点では、中国関連の自動車はポールスターのみが販売されており、BYDは未進出です。
ポールスターは、スウェーデンの自動車メーカーボルボと、その筆頭株主である中国の浙江吉利控股集団(ジーリーホールディングス)の出資により設立されたEVメーカーです。米国サウスカロライナに工場があります。
2024年夏場、中国メーカーのBYD(ビルド・ユア・ドリームス)は北米市場への参入を試みていました。しかし、アメリカ、カナダ政府が、中国からの電気自動車とハイブリッド車に対し新たに関税を設ける計画をしており、BYDは市場参入を様子見しています。
詳しくはこちらへ、
BYDがどの路線で販売するかはわかりませんが、日本車販売の脅威になることは間違いないでしょう。
ベトナムメーカーの北米進出について
VinFastがアメリカ、カナダ共に進出しています。
2024年末までに北米で約130カ所、全世界で約400カ所の販売拠点に達する見込みです。知名度の高い米国市場で認知度を高め、成功を収めることで、他の市場、特に未開拓であるアジア市場で効果的に規模を拡大していこうという戦略です。
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2017年に設立されたベトナムの自動車会社で、Vingroupという大手企業グループの一部です。2024年にはタイム誌によって世界の影響力ある企業100社に選ばれています。
カナダで数台見かけたことがあります。販売台数はこれから伸びてくると思うので、日本車にとって脅威です。
電気自動車(EV)の台頭
アメリカではTesla Model Yがランキング入りするなど、EVの普及が進んでいます。ただし、寒冷地特有のバッテリー性能の課題があり、EVの普及には時間がかかるかもしれません。
まとめ
2023年の自動車販売ランキングを通じて、カナダ、日本、アメリカの市場における違いが明らかになりました。カナダではピックアップトラックやSUVが圧倒的に人気で、実用性や悪天候への対応力が重視されています。
日本ではトヨタ車が圧倒的なシェアを誇り、小型車やコンパクトカーが好まれている一方、アメリカではEVの台頭とともに、依然としてピックアップトラックが市場を牽引しています。この比較から、北米市場が日本車一色ではなく、それぞれの国で独自の車文化が形成されていることが分かります。