今年もタックスリターンの時期がやってきましたね。みなさん、準備は順調ですか?今回はその中でも「投資に関係する税務フォーム」に絞って、T3、T5、T5008の違いや、間違えやすいポイントをまとめてみました。
私自身は Questrade を使っていて、毎年この時期になると「あれ、これはT3?T5?」と頭がこんがらがるので、自分用のメモも兼ねて書いています。ETFの種類や証券会社によって少し書類の扱いが変わったりするので、意外と奥が深かったりします。
「できるだけ早くタックスリターンを終わらせたい!」という気持ちはよく分かるのですが、投資関連の書類は3月末に届くものもあるので、慌てて提出してしまうと申告漏れになることも。できれば、全部のフォームが揃ってからゆっくり落ち着いて申告するのがおすすめです!
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タックスリターンの締切
カナダの2025年のタックスリターンに関する日程は以下の通りです。
- 2025年2月24日から、2024年分のタックスリターンのオンライン提出が可能になります。
- 2025年4月30日が、ほとんどの人にとっての提出&納税の締切日です。期限を守ることで、遅延ペナルティや利息を回避できます。
- 2025年6月15日(実質は6月16日)は、自営業者または自営業の配偶者がいる場合の提出期限です。
必要書類が4月30日のタックスリターン提出期限までに届かない場合は、まずはそれ以外の書類をもとに期限内に申告を済ませましょう。例えば、T3を待って提出が遅れると、遅延ペナルティや利息が発生する可能性があるため注意が必要です。T3が後日届いたら、追加でその情報を反映させる形で修正申告(adjustment)を行うことで対応できます。期限を守ることを優先し、必要な情報は後から正しく追加することが大切です。
T3、T5、T5008 の違いを説明
一覧表
フォーム | 報告内容 | 主な発行元 | 発行時期 | 誰が受け取る? |
---|---|---|---|---|
T3(信託所得) | 投資信託(Mutual Funds)、ETF、REIT などの分配金・キャピタルゲイン | 証券会社、投資信託会社 | 3月末 | 投資信託・ETF・REIT などで分配金を受け取った人 |
T5(投資所得) | 株式の配当、銀行の利息、外国投資の配当 | 銀行、証券会社、企業 | 2月末 | 配当や利息を受け取った人(株式投資家、預金者) |
T5008(株・債券の取引一覧) | 売却した株・ETF・債券の売却額と取得価格 | 証券会社 | 2月末 | 株やETF、債券を売却した人 |
取得価格が記載されていない理由として、証券が他の金融機関から移管された際に取得価格(コストベース)が引き継がれなかった可能性が考えられます。その場合は、以前の証券会社の口座明細を確認する必要があります。
どれが自分に関係する?
ETF・投資信託・REIT から分配金を受け取った場合 → T3
配当や銀行の利息を受け取った場合 → T5
株・ETF・債券を売却した場合 → T5008(単に取引一覧になります)
配当と分配金を混同しないように
配当・利息(T5)と分配金(T3)を混同しないようにしてください。それぞれの違いは以下の通りとなります。
配当金:企業が利益の一部を株主に還元するもので、主に決算期中に発生した利益から支払われます。
分配金:投資信託が運用益の一部を投資家に還元する際に支払われるお金です。
利息:預貯金や債券などの元本に対して支払われる一定の割合の収益を指します。
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Questradeなどでは、2月末に「T3 and T5013 Security List」というレポートが事前に発行されることがあります。これはT3そのものではありませんが、どの銘柄にT3やT5013が出るかの目安になるので、今年どんな書類が届きそうか事前に把握できます。
T3(信託所得)で報告されるETFの特徴
- 投資信託(Mutual Fund)、REIT(不動産投資信託)、カバードコールETFなどが該当します。
- 分配金にはキャピタルゲイン、ROC(Return of Capital)が含まれることが多いです。
- ROC(元本払戻し)は非課税ですが、将来のキャピタルゲインに影響します。
- キャピタルゲインは50%のみ課税されるため、税制上のメリットがあります。
- 配当が含まれる場合もありますが、T5の配当とは異なる分類になります。
カバードコールETFは、キャピタルゲインやオプションプレミアムを分配するため、T3で報告されることが多いです。ただし、カバードコール比率が1%以上でもT5で報告されるETFもあるため、税務報告の詳細を確認するのが確実です。
T5(投資所得)で報告されるETFの特徴
- 株式ETFや債券ETFの利息・配当が主な収益源のETFが該当します。
- 配当は「適格配当(Eligible Dividends)」として報告されることが多く、配当税額控除(Dividend Tax Credit)が適用されます。
- 債券ETFの場合、利息収入がT5のInterest Incomeとして報告されます。
- 配当所得は「Gross-up(増額)」され、給与所得のように課税されます。
銀行でGIC(Guaranteed Investment Certificate)を購入した場合や、AmplifiedやSaving Accountsの利息を受け取った場合、T5は2月中に銀行から送付されます。オンライン受け取りを設定している場合は、オンライン上で配布されます。
T5のEligible Dividends(適格配当)とは?
種類 | Eligible Dividends(適格配当) | Non-Eligible Dividends(非適格配当) |
---|---|---|
支払元 | 大企業(高法人税の企業) | 小規模企業(低法人税の企業) |
税額控除 | 高い(15.02% + 州の控除) | 低い(9.03% + 州の控除) |
税率 | 低い(給与所得より有利) | やや高い(しかし、給与所得より有利) |
Eligible Dividends(適格配当)は、カナダの上場企業や大企業が支払う配当のことで、税制上の優遇措置が受けられる種類の配当です。これらは、企業がすでに高い法人税率で課税された後の利益から支払われているため、受け取った側は税額控除(Dividend Tax Credit)を適用することができます。
この配当を申告する際は、「グロスアップ」と呼ばれる仕組みで、実際の配当額を38%増しにして課税所得として申告する必要があります。ただしその分、連邦政府と州政府の両方から税額控除が受けられるため、結果的に給与所得よりも低い実効税率になることが多いです。
例えば、カナダの大手銀行、エネルギー企業、通信企業などが支払う配当はほとんどがこの「適格配当」に該当します。投資先によっては、こうした配当を中心に受け取ることで、効率的に税金を抑えることも可能です。
一方、小規模企業などが支払う「非適格配当(Non-Eligible Dividends)」は、法人税率が低いため、税額控除も小さくなります。どちらの配当かによって申告方法や控除額が変わってくるので、間違えないように注意が必要です。
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まとめ
投資関連のタックスフォームは、最初はT3とかT5とかT5008とか、見慣れない名前ばかりで混乱しがちですが、それぞれの役割を理解してしまえばそんなに怖くありません。
T5は配当や利息の報告用で2月末に届くことが多く、T3はETFやREITの分配金などが対象で、3月末と少し遅めに発行されます。そしてT5008は取引履歴をまとめたもの。特に取得価格が書かれていないときは、自分でコストベースを確認する必要があります。
カバードコールETFなどのインカム系ETFはT3で、利息中心の債券ETFなどはT5で届く傾向がありますが、絶対ではないので「念のため自分で確認」スタンスが安心です。今年の申告も「焦らず、でも忘れず」に、必要な書類が揃ってからしっかりチェックして進めていきましょう。